2024年9月27日に行われた自民党総裁選の決選投票で、石破茂氏は高市早苗氏を破り、第28代自民党総裁に選出された。注目されたのは、石破氏が獲得した215票のうち、国会議員票が189票に達したことだ。1回目の投票で46票だった議員票が、決選投票では189票へと大きく伸びた。
では、石破茂氏に投票した189人の議員は誰なのか。2026年11月現在、自民党が公表した189人全員の公式な氏名一覧は確認できない。一方、岩屋毅、赤澤亮正、上川陽子、村上誠一郎、小野寺五典らについては、本人の発言や報道によって投票行動を確認できる。報道で判明した議員と、推薦人・旧派閥の動向から名前が挙がっている議員では、情報の確度が異なる。
【2024年自民党総裁選】石破茂215票・高市早苗194票の決選投票を振り返る

2024年9月27日、自民党総裁選は過去最多となる9人が立候補する混戦となった。1回目の投票では高市早苗氏が181票を獲得して首位となり、石破茂氏は154票で2位。いずれも過半数に届かず、上位2人による決選投票に進んだ。
ところが、決選投票では状況が一変する。石破氏が議員票を大きく伸ばし、最終的に215票を獲得。194票の高市氏を21票上回った。地方票だけでなく、国会議員票でも石破氏が逆転したことが勝敗を決定づけた。
決選投票の正式な得票結果自民党の公式発表と当日の報道によると、決選投票の内訳は次のとおりだ。
- 石破茂:議員票189票+都道府県票26票=215票
- 高市早苗:議員票173票+都道府県票21票=194票
両候補の差は、議員票で16票、都道府県票で5票。合計21票差で石破氏が勝利した。ここでいう189票は、石破氏に投じられた国会議員の有効票数であり、189人の名前が公式に公表されたという意味ではない。票数の公表と投票者の氏名公表は別の問題である。
1回目から決選投票への変化1回目と決選投票の数字を比較すると、議員票の動きが際立つ。
- 1回目の石破氏:議員票46票、党員算定票108票、合計154票
- 1回目の高市氏:議員票72票、党員算定票109票、合計181票
- 決選投票の石破氏:議員票189票、都道府県票26票、合計215票
- 決選投票の高市氏:議員票173票、都道府県票21票、合計194票
石破氏の議員票は1回目の46票から189票へ、143票増加した。決選投票では候補者が2人に絞られるため、敗退した7候補の支持議員も、石破氏か高市氏のどちらかを選ぶことになる。1回目の支持構造がそのまま維持されたわけではなかった。
なお、自民党の2024年総裁選の公式資料では、決選投票は国会議員票と47都道府県の各1票によって行われる仕組みと説明されている。1回目の党員算定票とは制度が異なるため、数字を混同しないことも大切だ。
【核心】石破茂に投票した議員189人の公式名簿は存在するのか
最も知りたい疑問への答えは、189人全員の投票先を記載した自民党公式名簿は公表されていないということだ。
自民党の総裁公選規程では、議員投票は単記無記名で行うと定められている。2024年総裁選の公式資料にも、党所属国会議員が1人1票を投じる仕組みが記載されている。
自民党公式サイトが公表しているのは、候補者別の得票数や総裁選の経緯、都道府県票の結果などである。議員一人ひとりがどの候補者に投票したかを示す公式の開票名簿ではない。
なぜ投票者の名前が分からないのか理由は無記名投票という制度にある。投票所では国会議員が順番に呼ばれ、投票用紙に候補者名を記入して投票する。しかし、投票用紙に議員本人の名前を記載する仕組みではない。
したがって、開票によって石破氏の189票、高市氏の173票という結果が判明しても、その189票を誰が投じたのかは、投票結果だけからは特定できない。
一方、議員本人が取材に応じたり、公式サイトやSNSで投票先を公表したりすれば、その人物については確認できる。地方局の報道では、県選出議員の投票先を個別に取材して紹介した事例もある。
71人の名前が記載されたリストは何だったのか2024年10月1日、Smart FLASHは、永田町で「2024決選投票で石破茂議員に投票した国会議員」と題したリストが流通していたと報じた。
同誌が入手した資料には、決選投票で石破氏に投票したとされる189人のうち、71人の名前が記載されていたという。資料には2024年9月29日作成との記載があり、投票先が判明した議員を随時追加する旨の注釈もあった。
ただし、記事ではリストの作成者や目的は不明とされている。掲載された71人についても、報道機関の取材や議員本人の発言などをもとに集められた情報であり、党が認定した公式名簿ではない。
この71人という数字は、189票の全体像を示すものではなく、公開情報から名前を確認できた議員を集めた民間の資料として扱う必要がある。
【氏名を確認】報道・本人発言で石破氏への投票が判明した議員一覧
189人全員の氏名は明らかになっていないが、本人の発言や地域報道によって決選投票の投票先が判明した議員はいる。
以下は、2024年9月27日前後の報道や本人の公開発信で、石破氏への投票が具体的に確認できる人物を地域別に整理したものだ。推薦人だったという理由だけで投票者に加えることはしていない。
| 地域 | 議員名 | 確認できる投票行動・情報源 |
|---|---|---|
| 大分県 | 岩屋毅、衛藤征士郎 | 大分放送が、両氏とも1回目と決選投票の2回にわたり石破氏に投票したと報道。 |
| 静岡県 | 上川陽子、牧野京夫 | 上川氏は決選投票で石破氏に投票したと本人が発言。牧野氏も「2回目は石破茂さんに投票しました」と明言。 |
| 愛媛県 | 村上誠一郎、井原巧、長谷川淳二 | あいテレビが、村上氏と井原氏は1回目・決選投票ともに石破氏、長谷川氏は決選投票で石破氏に投票したと報道。 |
| 宮城県 | 小野寺五典 | ミヤテレNEWS NNNの取材で、1回目は林氏、決選投票では石破氏に投票したと本人が説明。 |
| 香川県 | 平井卓也、磯崎仁彦、三宅伸吾 | 瀬戸内海放送が3氏の決選投票での石破氏への投票を報道。平井氏は自身の公式サイトでも投票先を公表。 |
この表に掲載した議員は、合計11人。これは公開された報道・本人発言から具体的な投票行動を確認できる人物の一部であり、189人の完全な名簿ではない。
岩屋毅は石破陣営の選対本部長としても活動岩屋毅氏は、石破陣営の選挙対策本部長を務めた人物だ。大分放送の2024年9月27日の報道では、岩屋氏と衛藤征士郎氏の両名が1回目と決選投票の両方で石破氏に投票したと紹介された。
岩屋氏については、単に石破氏の推薦人だったというだけでなく、地元報道で実際の投票行動まで伝えられている点が重要だ。
上川陽子は決選投票で石破氏を選んだ上川陽子氏は1回目の投票で40票を獲得した候補者の一人で、決選投票には進めなかった。
静岡朝日テレビの2024年9月27日の報道では、上川氏が決選投票について、自ら石破氏に投票したと明らかにしている。1回目に自身が立候補していた候補者であっても、決選投票では別の候補者を選ぶという具体例だ。
村上誠一郎と小野寺五典も投票先を公表愛媛県選出の村上誠一郎氏は、あいテレビの取材に対し、1回目と決選投票の両方で石破氏に投票したと説明した。同じく井原巧氏も2回とも石破氏に投票。長谷川淳二氏は1回目に小泉進次郎氏、決選投票では石破氏を選んでいる。
また、宮城県選出の小野寺五典氏は、1回目には林芳正氏に投票し、決選投票で石破氏に投票したとミヤテレNEWS NNNの取材で明らかにした。
こうした個別の証言からも、決選投票では1回目の候補者支持とは異なる判断が行われたことが分かる。
【混同注意】岩屋毅・赤澤亮正らの推薦人と実際の投票先は違う
石破氏に投票した議員を調べる際、特に注意したいのが「推薦人」と「決選投票の投票者」を同じものとして扱うことだ。
自民党総裁選では、候補者として立候補するために党所属国会議員20人の推薦が必要となる。推薦人は、その候補者を総裁選に出馬させるために支援した議員である。
しかし、推薦人になったからといって、決選投票でも必ず同じ候補者に投票するとは限らない。投票用紙は無記名であり、推薦人の立場と実際の投票行動は別々に確認する必要がある。
石破陣営の公式推薦人として掲載された議員自民党の総裁選2024公式候補者ページには、石破氏の推薦人として次のような議員が掲載されている。
- 岩屋毅
- 赤澤亮正
- 泉田裕彦
- 伊東良孝
- 小里泰弘
- 門山宏哲
- 平将明
- 橘慶一郎
- 田所嘉徳
- 谷公一
- 冨樫博之
- 長島昭久
- 細野豪志
- 村上誠一郎
- 八木哲也
- 保岡宏武
- 青木一彦
- 藤井一博
- 舞立昇治
- 山田俊男
このうち岩屋毅氏は、大分放送の取材によって決選投票での石破氏への投票も確認できる。
一方、赤澤亮正氏は公式ページで推薦人として掲載されている。石破氏の政治グループに所属していたことも知られているが、推薦人という情報だけを根拠に、決選投票での投票先まで確定したものとして扱うことはできない。
平将明氏や細野豪志氏についても、推薦人であったことと決選投票での投票先の確認は分けて考える必要がある。
「推薦人だから189人の一人」と機械的に数えることは、正確な議員名簿を作るうえで避けるべき誤りだ。
【旧派閥別】石破茂の189票を支えた議員の投票動向
石破氏が1回目の46議員票から決選投票で189議員票まで伸ばした背景には、旧派閥や議員グループの動きがあった。
2024年の総裁選は、政治資金問題を受けて派閥の解散が進んだ後の選挙だった。しかし、派閥が解散したからといって、議員同士の人間関係や政策的なつながりまで消えたわけではない。
旧岸田派は石破氏への支持が広がったTBSの2024年9月27日の解説で、スペシャルコメンテーターの星浩氏は、旧岸田派の47人が決選投票で石破氏を推す動きになり、二階派38人も加わったと分析した。
旧岸田派には比較的穏健な政策姿勢を持つ議員が多く、高市氏の政治姿勢との距離感が投票判断に影響したとみられる。岸田文雄氏自身については、決選投票での投票先を明らかにしていない。
旧二階派や菅グループ、小泉陣営からも票が流入FNNプライムオンラインが2024年9月30日に掲載した総裁選分析では、菅義偉氏や林芳正氏、岸田首相のグループが石破氏側につき、1回目に小泉進次郎氏を支持した議員の多くも決選投票では石破氏に流れたと解説している。
また、茂木派でも参議院議員を中心に石破氏に投票した議員がいたと分析された。
旧安倍派・麻生派は一枚岩ではなかった一方、旧安倍派では高市氏を支持する議員が多かった。麻生派も当初は高市氏支持の方向で動いていたが、最終的には派内で票が割れたとTBSは報じている。
こうした動きから分かるのは、旧派閥の所属だけでは個人の投票先を決められないということだ。政策的な考え方、候補者との関係、次期衆院選への見通しなど、複数の事情が判断に影響した。
決選投票では、候補者が9人から2人に絞られる。1回目の投票で誰を支持したかよりも、最終的にどちらの候補者が党全体をまとめ、選挙に勝てるかという判断が前面に出たと考えられる。
【2026年最新】石破氏に投票した議員名簿の確認方法と注意点
2026年11月現在、インターネット上には「石破氏に投票した議員189人」「石破陣営の議員一覧」といったタイトルの資料が複数存在する。しかし、それらを同じ確度の情報として扱うことはできない。
特に注目されるのが、2026年2月6日付で公開された個人による資料整理記事だ。同記事は、2024年の決選投票で石破氏に投票したとされる議員71人をまとめ、1回目と決選投票の両方で石破氏に投票したとされる議員と、決選投票で支持した議員を区分している。
ただし、同資料も無記名投票であることを前提とした民間の情報整理であり、自民党の公式発表ではない。2024年10月のSmart FLASHによる71人のリスト報道とも、全員の投票先が公的に認定されたわけではないという点で共通している。
2024年10月1日の首班指名投票と混同しないもう一つ、注意が必要なのが国会で行われた内閣総理大臣の指名選挙だ。
2024年10月1日、参議院が公表した首班指名選挙の投票結果には、石破茂氏に投票した参議院議員の氏名が掲載されている。自民党所属議員の内訳は112人だった。
しかし、これは自民党総裁選の決選投票とは別の選挙である。参議院での首班指名投票における112人の氏名を、そのまま総裁選で石破氏に投票した189人の名簿として使用することはできない。
首班指名は国会議員が内閣総理大臣を選ぶ国会の手続きであり、総裁選は自民党所属議員などが党総裁を選ぶ党内選挙である。投票日も選挙の仕組みも異なる。
信頼できる投票情報を見分ける4つの基準- 本人の明言:議員本人が「決選投票では石破氏に投票した」と明らかにしているか。
- 報道機関の直接取材:全国紙、地方紙、テレビ局などが本人への取材で投票先を確認しているか。
- 投票時期の区別:1回目の投票と決選投票のどちらについての情報なのか明確か。
- 推薦人・派閥情報との区別:推薦人や所属グループという間接情報だけで投票先を断定していないか。
とりわけ、本人の発言と周囲の関係者による推測は、同じ一覧表に掲載されていても情報の性質が異なる。情報を読む際は、名前だけでなく、その根拠となる発言や報道の内容まで確認したい。
【プロの結論】189人の投票者をめぐる本当のポイント
2024年自民党総裁選の決選投票で石破茂氏が獲得した189議員票は、単なる数字以上の意味を持つ。1回目の投票で高市早苗氏に72票を許していた石破氏が、最終的に議員票で16票差をつけたことは、自民党内の支持構造が決選投票で大きく変わったことを示している。
しかし、189人の氏名が公式に公開されていない以上、ネット上の一覧をそのまま完全な名簿として扱うのは適切ではない。
2026年時点で確認できる情報を整理すると、次の3点が重要になる。
- 確定している事実:石破氏の決選投票における議員票は189票、総得票数は215票。
- 名前まで確認できる事実:岩屋毅、衛藤征士郎、上川陽子、牧野京夫、村上誠一郎、井原巧、長谷川淳二、小野寺五典、平井卓也、磯崎仁彦、三宅伸吾などは本人発言や報道で投票先を確認できる。
- 確定できない情報:189人全員の公式な個人別投票記録や、推薦人・旧派閥の所属だけを根拠とした投票先の断定。
自民党総裁選は党内の権力構造や政策路線を読み解く重要な政治イベントだが、無記名投票という制度の原則も守られなければならない。得票数、本人の公表、報道による確認、派閥単位の分析を分けて見ることが、政治情報を正確に理解するための出発点となる。
【石破茂に投票した議員のリスト189人】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:石破茂に投票した189人全員の名前が分かる公式名簿はありますか?
A1:2026年11月現在、189人全員の氏名を掲載した自民党公式名簿は公表されていない。決選投票は無記名で行われ、公式に公表されたのは候補者別の得票数である。本人の発言や報道で確認できる議員はいるが、全員を特定できる公的資料は確認されていない。
Q2:岩屋毅と赤澤亮正は石破氏に投票した議員ですか?
A2:岩屋毅氏は石破陣営の選対本部長を務め、大分放送が1回目と決選投票の両方で石破氏に投票したと報道している。赤澤亮正氏は石破氏の公式推薦人として掲載されている。ただし、推薦人という事実と決選投票の投票先の確認は区別する必要がある。
Q3:石破氏に投票した議員189人は旧岸田派や旧二階派が中心ですか?
A3:旧岸田派や旧二階派から石破氏への支持が広がったと報道・政治解説で分析されている。菅グループや小泉陣営の支持議員、茂木派の一部からも票が流れたとされる。ただし、旧派閥の所属だけで個々の議員の投票先を確定することはできない。
2024年9月27日の自民党総裁選決選投票で、石破茂氏は215票を獲得した。その内訳は議員票189票、都道府県票26票。高市早苗氏は194票で、21票差の結果となった。
岩屋毅、衛藤征士郎、上川陽子、村上誠一郎、小野寺五典らについては、本人の発言や報道によって石破氏への投票が確認できる。一方、赤澤亮正ら推薦人として名前が掲載された議員については、推薦人という事実だけで決選投票の投票先まで確定させることはできない。
2026年時点でも、189人全員の公式名簿は存在を確認できず、公開情報をもとにした71人規模の民間リストが知られているにとどまる。
「189票を獲得した」という確定した選挙結果と、「誰がその189票を投じたのか」という個人別の情報は別物だ。総裁選の投票先を調べる際には、本人公表・報道による確認・推薦人・派閥推測の4つを区別することが、誤った議員名簿を信じないための最も確実な判断基準となる。