「在日犯罪」という言葉で検索すると、外国人による犯罪の増加や国籍別の検挙状況、永住者・特別永住者の犯罪統計など、さまざまな情報が見つかる。しかし、警察庁の公式統計を読む際には、最初に押さえておかなければならない点がある。それは、一般に使われる「在日犯罪」と、警察庁が統計上分類する「来日外国人犯罪」は、同じ意味ではないということだ。
2026年11月現在、確認できる2025年(令和7年)の確定統計では、来日外国人犯罪の総検挙件数は25,480件。一方、在留資格「永住者」による犯罪の総検挙件数は4,094件となっている。加えて、特別永住者は来日外国人の統計対象から除外されている。これらの数字は対象者も集計区分も異なるため、単純に比較したり合算したりすることはできない。
【基本知識】「在日犯罪」とは何を指す?公式統計との違い

「在日犯罪」は、警察庁の犯罪統計で使われる正式な分類名ではない。一般的には、日本に居住する外国籍の人による犯罪を指す検索語として使われるが、具体的に誰を対象とするかは文脈によって異なる。
たとえば、外国籍の人による犯罪全般を調べたい場合と、来日して間もない外国人による犯罪を調べたい場合では、参照すべき統計が違う。また、日本で長年生活する永住者や特別永住者を含めるかどうかによっても、数字は変わってくる。
警察庁の「令和7年における組織犯罪の情勢」では、来日外国人について、我が国にいる外国人のうち、いわゆる定着居住者、在日米軍関係者、在留資格不明者を除いた外国人と定義している。
ここでいう定着居住者には、次の3つが含まれる。
- 在留資格「永住者」
- 在留資格「永住者の配偶者等」
- 特別永住者
つまり、来日外国人犯罪の統計は、日本にいる外国籍の人すべてを対象にした数字ではない。永住者や特別永住者など、長期的な生活基盤を持つ人々を別の区分として扱っている。
この分類を知らずに25,480件を「日本に住む外国人全体の犯罪件数」と紹介すると、統計の対象範囲を誤って伝えることになる。
「永住者」と「特別永住者」は同じではない両者は名称が似ているものの、法律上の根拠が異なる。
「永住者」は、出入国管理及び難民認定法に基づく在留資格の一つで、法務大臣から永住許可を受けた外国人に認められる。原則として在留期間の更新がなく、就労活動にも一般的な在留資格のような制限がない。
一方、「特別永住者」は、日本国との平和条約に基づき日本国籍を離脱した人々や、その子孫などに関係する歴史的背景を持つ制度で、特別永住者に関する法律に基づく地位である。
そのため、警察庁の統計では、永住者と特別永住者を一括して「永住者」として扱っているわけではない。特別永住者は独立した法的地位であり、来日外国人の検挙統計からも除外されている。
【2025年確定値】来日外国人犯罪の検挙件数25,480件の実態
警察庁が2026年4月に公表した「令和7年における組織犯罪の情勢」の確定値版によると、2025年の来日外国人犯罪の総検挙件数は25,480件だった。
前年の2024年は21,794件だったため、3,686件増加し、前年比16.9%増となっている。2023年から3年連続で増加しており、直近の推移を確認するうえで重要な変化だ。
ただし、内訳を見ると、すべての犯罪区分が増加したわけではない。
刑法犯と特別法犯の内訳2025年の検挙件数は、刑法犯が17,614件、特別法犯が7,866件だった。前年と比較すると、刑法犯が31.4%増加した一方、特別法犯は6.2%減少している。
検挙人員については、合計12,777人。刑法犯が7,333人、特別法犯が5,444人で、前年から607人、5.0%増加した。
件数と人員は異なる指標であるため、25,480件を25,480人と読み替えることはできない。
犯罪の種類にも注目刑法犯17,614件のうち、最も多かったのは窃盗犯の12,226件で、刑法犯全体の69.4%を占めた。前年比では34.3%増加している。
一方、特別法犯7,866件では、入管法違反が5,121件で最も多く、65.1%を占めた。入管法違反の検挙件数自体は前年より14.3%減少している。
薬物事犯は1,565件で、前年比20.8%増加した。したがって、2025年の統計は、窃盗犯などの刑法犯が増えた一方、入管法違反を中心とする特別法犯全体は減少したという構造になっている。
この内訳を見れば、総検挙件数の増加だけを取り上げて、あらゆる種類の犯罪が一様に増加したと説明することが正確でないことが分かる。
【最重要比較】来日外国人25,480件と永住者4,094件の違い
「在日犯罪」の統計を調べる際、特に混同されやすいのが、来日外国人の25,480件と在留資格「永住者」の4,094件である。
警察庁は、2025年の資料で永住者による犯罪の検挙状況を独立した項目として掲載している。総検挙件数は4,094件、総検挙人員は3,175人だった。
4,094件の内訳は、刑法犯3,215件、特別法犯879件。2024年の4,221件から127件減少し、前年比3.0%減となっている。
この数字は、来日外国人25,480件の内数ではない。警察庁の統計上、永住者は来日外国人とは別に分類されているためだ。
2025年の主要統計を比較出典:警察庁「令和7年における組織犯罪の情勢」確定値版、出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」。
永住者4,094件は全外国人犯罪の13.6%警察庁の資料によると、永住者の総検挙件数4,094件は、来日外国人及び定着居住者(特別永住者を除く。)の総検挙件数の13.6%に当たる。
また、永住者の検挙人員3,175人は、同じ比較対象の総検挙人員の19.5%を占めている。
ここで注意したいのは、13.6%という数字が、日本にいる外国籍者全体に占める永住者の犯罪割合ではないという点だ。警察庁が定めた特定の集計対象における構成比であり、外国籍者全体の人口に対する犯罪率とは異なる。
加えて、永住者の検挙件数は2023年の4,243件から2024年の4,221件、2025年の4,094件へと推移している。2025年は前年より減少しており、来日外国人の検挙件数が増加した動きとは異なる。
特別永住者の犯罪統計はどう扱われている?特別永住者は、警察庁が定義する来日外国人には含まれない。また、2025年の「令和7年における組織犯罪の情勢」の来日外国人犯罪の章では、特別永住者だけを独立させた総検挙件数は掲載されていない。
そのため、25,480件を特別永住者の犯罪件数として扱うことも、永住者の4,094件に特別永住者の数字が含まれていると考えることも適切ではない。
特別永住者の検挙状況を調べる場合は、来日外国人の統計とは対象範囲が異なることを前提に、警察庁の犯罪統計資料や法務省の犯罪白書など、集計区分が明確な資料を確認する必要がある。
【国籍別・在留資格別】2025年の検挙状況から見える特徴
来日外国人の検挙状況は、国籍・地域別や在留資格別にも集計されている。
2025年の総検挙件数を国籍・地域別に見ると、ベトナム、中国、タイの順に多かった。
- ベトナム:10,773件、構成比42.3%
- 中国:3,114件、構成比12.2%
- タイ:2,407件、構成比9.4%
検挙人員でもベトナムが4,167人、中国が2,062人となっており、この2か国で総検挙人員の約半数を占める。
ただし、国籍別の検挙件数は、その国籍を持つ人々の犯罪率を示すものではない。各国籍の在留者数や短期滞在者数、滞在期間などの条件が異なるため、件数の大小だけで国籍別の犯罪傾向を判断することはできない。
在留資格別では技能実習・短期滞在などが上位2025年の来日外国人の総検挙人員12,777人を在留資格別に見ると、上位は次のとおりだった。
- 技能実習:2,812人(22.0%)
- 短期滞在:2,166人(17.0%)
- 留学:1,521人(11.9%)
- 定住者:1,469人(11.5%)
- 技術・人文知識・国際業務:1,069人(8.4%)
これらは検挙された人員の構成比であり、それぞれの在留資格を持つ人全体のうち何%が犯罪をしたかを示す数字ではない。
また、ここに挙げた在留資格別の内訳は来日外国人の集計であり、別区分の永住者4,094件とは混同できない。
【人口比で比較】在留外国人数2025年の最新データと統計の注意点
外国人犯罪の実態を検討するとき、検挙件数だけでなく、在留外国人数という母数を確認することも欠かせない。
出入国在留管理庁が2026年3月27日に公表した2025年末の在留外国人数は、4,125,395人だった。前年末の3,768,977人から356,418人増加し、初めて400万人を超えた。
内訳は、中長期在留者が3,858,499人、特別永住者が266,896人。さらに在留資格別では、永住者が947,125人で最も多かった。
この数字は2025年12月末時点の人口統計であり、警察庁の検挙統計で使われる母数とは基準日が異なる。
2025年6月末と12月末の違い警察庁の令和7年の組織犯罪情勢では、2025年の検挙状況と比較する在留外国人数として、6月末時点の3,956,619人を使用している。
同時点の永住者は932,090人、特別永住者は270,292人だった。永住者は在留外国人数全体の23.6%を占めていた。
一方、12月末になると在留外国人数は4,125,395人、永住者は947,125人、特別永住者は266,896人となっている。
したがって、2025年の検挙件数と人口を比較する際には、6月末の人口と12月末の人口を混在させないことが大切だ。
外国人犯罪の人口比は単純計算できない「外国人犯罪は日本人より多いのか」「人口比ではどうなのか」という疑問も多い。しかし、検挙件数を在留外国人数で割るだけでは、正確な犯罪率にはならない。
その理由は、検挙統計と在留人口統計で対象者の範囲が一致しないためだ。
たとえば、来日外国人の検挙統計には短期滞在者が含まれる一方、在留外国人数の統計は中長期在留者と特別永住者を中心に集計している。短期滞在者を含む検挙件数を、特定時点の在留人口で単純に割れば、分子と分母の対象が一致しない。
また、国籍別に比較する場合にも、各国籍の在留者数、滞在期間、年齢構成、性別構成などを考慮する必要がある。
警察庁の2025年資料では、来日外国人による刑法犯の検挙件数が、日本人等を含む刑法犯全体の5.9%、検挙人員が3.7%と示されている。
この5.9%と3.7%は、刑法犯全体に占める検挙件数・検挙人員の構成比であり、外国人の人口比や犯罪率ではない。両者を混同すると、実態を大きく誤解することになる。
【統計の読み方】刑法犯・特別法犯・検挙件数・検挙人員の違い
犯罪統計を正しく読むためには、数字の分類だけでなく、法律上の区分と警察統計上の集計単位も理解しておきたい。
刑法犯と特別法犯の違い刑法犯は、刑法に規定された犯罪を中心とする分類である。窃盗、詐欺、傷害、強盗、殺人などが代表例だ。警察庁の統計では、一定の特別法に規定された犯罪も刑法犯の区分に含めるという技術的な扱いがある。
特別法犯は、刑法犯の区分に含まれない各種法律や条例などへの違反を指す。外国人犯罪の統計では、入管法違反、薬物関連法令違反、銃刀法違反などが代表的な項目となる。
2025年の来日外国人の特別法犯7,866件には、入管法違反5,121件が含まれる。つまり、25,480件のすべてが窃盗や暴行などの一般的な刑事犯罪というわけではない。
刑法犯と特別法犯は、適用される法律や違反内容が異なるため、単純に同じ性質の犯罪として扱わないことが重要だ。
検挙件数と検挙人員はどう違う?検挙件数は、警察などが検挙した事件の数を指す。検挙人員は、その事件の被疑者として検挙された人の数を指す。
たとえば、複数人が関与した1件の事件では、検挙件数は1件でも、検挙人員は複数人になることがある。また、同じ人物が別々の事件で検挙されれば、件数と人員の関係はさらに複雑になる。
特別法犯については、警察庁の資料で検挙件数・検挙人員が、それぞれ送致件数・送致人員として集計される旨も明記されている。
加えて、検挙は有罪判決の確定を意味しない。検挙統計は警察活動における事件処理の状況を示すもので、最終的な有罪者数や犯罪発生総数とは異なる。
統計を読む際に確認したい5つのポイント- 対象範囲:来日外国人なのか、永住者を含む外国籍者全体なのか。
- 集計期間:2025年1月から12月までの年間統計なのか、特定時点の人口なのか。
- 犯罪区分:刑法犯と特別法犯のどちらを含むのか。
- 集計単位:事件数なのか、検挙された人数なのか。
- 比較方法:実数なのか、人口比なのか、全体に占める構成比なのか。
この5項目を確認するだけでも、インターネット上で紹介される数字が、公式統計と同じ意味で使われているかどうかを判断しやすくなる。
【よくある質問】在日犯罪に関するFAQ
Q1:2025年の外国人犯罪の検挙件数は何件ですか?
A1:警察庁の「令和7年における組織犯罪の情勢」によると、来日外国人犯罪の総検挙件数は25,480件です。内訳は刑法犯17,614件、特別法犯7,866件で、検挙人員は12,777人となっています。
Q2:永住者4,094件は来日外国人25,480件に含まれますか?
A2:含まれません。警察庁は永住者を定着居住者として扱い、来日外国人とは別の区分で集計しています。4,094件は永住者による総検挙件数で、検挙人員は3,175人です。
Q3:特別永住者は外国人犯罪の統計に含まれますか?
A3:来日外国人犯罪の統計には含まれません。特別永住者は永住者とは異なる法的地位であり、警察庁の来日外国人の定義では定着居住者として除外されています。
Q4:外国人犯罪の検挙件数が増えたことは、犯罪率も上昇したことを意味しますか?
A4:必ずしもそうではありません。検挙件数は事件の数であり、犯罪率を示すものではありません。在留外国人数、滞在期間、対象者の範囲などをそろえて比較する必要があります。
Q5:2025年末の在留外国人数は何人ですか?
A5:出入国在留管理庁によると、2025年12月末の在留外国人数は4,125,395人です。中長期在留者3,858,499人と特別永住者266,896人を合わせた数字です。
2026年に確認できる2025年の確定統計では、来日外国人犯罪の総検挙件数は25,480件、在留資格「永住者」の総検挙件数は4,094件だった。
しかし、この2つの数字は対象者の範囲が異なる。永住者は来日外国人の統計から除外され、特別永住者も定着居住者として別扱いになっている。「在日犯罪」という検索語だけで、これらの統計を一つの集計結果として扱うことはできない。
また、2025年の来日外国人犯罪では、刑法犯の検挙件数が増加する一方、特別法犯は減少した。窃盗犯、入管法違反、薬物事犯など、犯罪の種類によっても動きは異なる。
今後、外国人犯罪の実態を判断するうえでは、検挙件数の増減だけでなく、検挙人員、在留資格、国籍別の人口規模、人口比、犯罪区分を合わせて確認する必要がある。
特に重要なのは、検挙件数の多さと、その集団に属する人々全体の犯罪率を同一視しないことだ。数字の対象と母数を正しく理解すれば、外国人犯罪をめぐる議論を、印象や断片的な情報ではなく、客観的な統計に基づいて考えることができる。
2025年の確定統計が示しているのは、外国人犯罪の単純な増減だけではない。来日外国人、永住者、特別永住者という異なる制度上の区分を理解し、それぞれの実態を分けて検証することこそ、2026年の犯罪情勢を読み解く出発点となる。
主な公的資料
- 警察庁「令和7年における組織犯罪の情勢」確定値版(2026年4月)
- 警察庁「令和7年の犯罪情勢」確定値(2026年8月更新)
- 出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」(2026年3月27日)
- 法務省「令和7年版犯罪白書」