「市川海老蔵」の名前で広く知られてきた歌舞伎俳優は、2026年現在、十三代目市川團十郎白猿として活動している。2022年11月に歌舞伎界の大名跡を襲名し、成田屋の伝統を受け継ぐ立場となった。映画『利休にたずねよ』で日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を受賞するなど、歌舞伎だけでなく映像作品でも実績を残している俳優だ。
本名は堀越寶世(ほりこし・たかとし)。1977年12月6日生まれで、2026年11月4日時点では48歳にあたる。現在は歌舞伎の古典演目への出演に加え、襲名を題材にしたドキュメンタリー映画『襲名』の公開など、活動の幅を広げている。かつての市川海老蔵と現在の市川團十郎は何が違うのか。経歴、代表作、受賞歴、2026年の最新活動から俳優としての実像を整理する。
【2026年現在】市川海老蔵は十三代目市川團十郎白猿として活動中

2026年現在、市川海老蔵という名前で知られる人物の正式な歌舞伎俳優としての名跡は、十三代目市川團十郎白猿である。
市川海老蔵は、2004年に襲名した十一代目市川海老蔵の芸名だった。2022年11月、歌舞伎座で十三代目市川團十郎を襲名したことにより、現在の名前へと変わった。
襲名は単純な芸名変更ではない。歌舞伎では、歴代の俳優が受け継いできた名跡を継承することが、芸や家の歴史を引き継ぐ重要な節目となる。とりわけ市川團十郎は、江戸歌舞伎を代表する300年以上の歴史を持つ大名跡だ。
2022年10月31日には歌舞伎座で顔寄せ手打式が行われ、同年11月から襲名披露興行が始まった。当初の襲名披露は新型コロナウイルスの影響で延期されており、実現までには長い準備期間を要した。
2026年の主な活動と公演予定2026年も舞台活動は続いている。成田屋の公式公演スケジュールによると、10月には京都・南座で市川團十郎特別公演に出演し、『勧進帳』などを披露した。
11月4日時点で発表されている今後の主な予定は次のとおりだ。
- 2026年11月6日・7日:山口県下関市の岬之町にぎわい広場特設会場で「市川團十郎 壇ノ浦歌舞伎」に出演。『延年の舞』『連獅子』などを披露する予定。
- 2026年12月2日~25日:歌舞伎座の「十二月大歌舞伎」に出演。『與話情浮名横櫛』では坂東玉三郎と共演する予定。
また、2026年9月25日には襲名披露の舞台裏を記録した映画『襲名』が全国公開された。歌舞伎の舞台に立つだけでなく、自身の芸能活動や名跡継承を映像作品として伝える仕事にも取り組んでいる。
こうした活動を見ると、2026年の市川團十郎は、古典歌舞伎の継承者であると同時に、伝統芸能を映画や新しい舞台表現を通じて広く発信する俳優でもある。
【プロフィール・経歴】市川團十郎の本名や市川海老蔵時代からの歩み
十三代目市川團十郎白猿は、幼少期から歌舞伎の舞台に立ってきた。父は十二代目市川團十郎であり、成田屋の芸を受け継ぐ家系に生まれた。
歌舞伎の世界では、幼い頃から舞台経験を積み、複数の名跡を経て大名跡を襲名することがある。團十郎も市川新之助、市川海老蔵という名前を経て、現在の十三代目市川團十郎に至っている。
市川團十郎の基本プロフィール- 現在の芸名:十三代目市川團十郎白猿
- 旧芸名:十一代目市川海老蔵
- 本名:堀越寶世(ほりこし・たかとし)
- 生年月日:1977年12月6日
- 年齢:48歳(2026年11月4日時点)
- 出身地:東京都
- 屋号:成田屋
- 父:十二代目市川團十郎
- 主な活動:歌舞伎、映画、テレビドラマ、自主公演
本名の「寶世」は「たかとし」と読む。一般的な漢字表記とは異なるため、検索時には読み方を間違えないようにしたい。
市川海老蔵から十三代目市川團十郎への経歴年表| 時期 | 出来事・芸名 | 主な実績・意味 |
|---|---|---|
| 1977年 | 東京都に誕生 | 十二代目市川團十郎の長男として生まれる |
| 1983年5月 | 初御目見得 | 歌舞伎座『源氏物語』の春宮役 |
| 1985年5月 | 七代目市川新之助を襲名 | 『外郎売』の貴甘坊で初舞台 |
| 1999年1月 | 『勧進帳』の弁慶を初役で演じる | 歌舞伎俳優としての重要な転機 |
| 2003年 | NHK大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』 | 宮本武蔵役でテレビでも広く知られる |
| 2004年5月 | 十一代目市川海老蔵を襲名 | 歌舞伎界を代表する俳優として活躍 |
| 2013年 | 自主公演ABKAIを初開催 | 新しい歌舞伎表現にも挑戦 |
| 2015年 | 六本木歌舞伎を初開催 | 伝統と現代的な演出を組み合わせた舞台に取り組む |
| 2022年11月 | 十三代目市川團十郎を襲名 | 成田屋の大名跡を継承 |
この年表で注目したいのは、海老蔵時代にすでに歌舞伎以外の分野でも実績を積み重ねていた点だ。
2003年のNHK大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』では宮本武蔵を演じ、テレビドラマを通じて歌舞伎に詳しくない視聴者にも知られる存在となった。
また、2013年には自主公演ABKAIを開始し、2015年には六本木歌舞伎を立ち上げている。伝統的な歌舞伎の型を守るだけでなく、新しい観客層に向けた表現にも積極的だったことが分かる。
これらの経歴は、現在の團十郎の活動を理解するうえでも重要な背景となっている。
【成田屋の伝統】歌舞伎十八番と『勧進帳』に見る市川團十郎の芸
市川團十郎を理解するうえで欠かせないのが、屋号である成田屋と、その家の芸である歌舞伎十八番だ。
歌舞伎の屋号は、俳優の家や一門を示す呼称であり、舞台上では「成田屋」という掛け声としても親しまれている。市川團十郎という名跡と成田屋の歴史は、密接に結びついている。
歌舞伎十八番は成田屋が受け継ぐ重要な演目群歌舞伎十八番は、七代目市川團十郎が1832年に制定を公表した成田屋の家の芸の集大成だ。
初代、二代目、四代目市川團十郎らが初演した演目を中心に選ばれており、成田屋が長年受け継いできた芸の象徴となっている。
代表的な演目には、『暫』『助六』『鳴神』『外郎売』『景清』などがあり、その中に『勧進帳』も含まれている。
『勧進帳』の弁慶は團十郎の重要な代表役『勧進帳』は、源義経と武蔵坊弁慶らが奥州へ逃れる途中、加賀国安宅の関で関守・富樫左衛門に行く手を阻まれる物語だ。
弁慶は、義経を守るために機転を利かせ、白紙の巻物を勧進帳に見立てて読み上げる。さらに主君を守るため、義経を打ち据えるという苦渋の行動にも出る。
この演目の見どころは、弁慶の機転だけではない。主君への忠義、関守との緊迫したやり取り、そして弁慶が抱える葛藤が、俳優の声や身体表現を通じて描かれる。
市川團十郎は1999年1月、浅草公会堂で弁慶を初役で演じた。その後も『勧進帳』は重要な演目として取り組んでおり、2022年の襲名披露でも大きな意味を持つ演目となった。
さらに2026年10月の南座公演でも『勧進帳』の弁慶を勤めている。襲名から年月を経ても、成田屋の芸の中心に立ち続けていることがうかがえる。
『勧進帳』は単に有名な歌舞伎作品というだけではない。團十郎という名跡が何を受け継ぐのかを理解するための重要な演目なのである。
【映画出演・受賞歴】『利休にたずねよ』で日本アカデミー賞を受賞
市川海老蔵は、歌舞伎俳優としての活動と並行して映画にも出演してきた。映画俳優としての代表作を挙げるなら、2013年公開の『利休にたずねよ』が外せない。
市川團十郎の主な映画出演作品- 2006年『出口のない海』:並木浩二役。映画主演を務めた作品。
- 2011年『一命』:津雲半四郎役。三池崇史監督作品。
- 2013年『利休にたずねよ』:千利休役。日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を受賞。
- 2014年『喰女-クイメ-』:長谷川浩介・伊右衛門役。映画で複数の人物像を演じた。
これらの作品からは、時代劇や歴史上の人物を演じる機会が多いことが分かる。歌舞伎で培った時代物の表現や、独特の身体の使い方を映像作品にも生かしている。
『利休にたずねよ』で演じた千利休とは『利休にたずねよ』は、山本兼一の直木賞受賞小説を原作とする歴史映画で、田中光敏が監督を務めた作品だ。
市川海老蔵が演じたのは、安土桃山時代の茶人・千利休。茶の湯を極めた人物の人生をたどりながら、その美意識の原点に迫る物語となっている。
本作では、若い時代から晩年までの千利休を演じ分けた。年齢や立場の変化を表現するうえで、歌舞伎で積み重ねてきた所作や身体表現が大きな役割を果たしている。
第37回日本アカデミー賞の優秀主演男優賞2014年3月7日に開催された第37回日本アカデミー賞で、市川海老蔵は『利休にたずねよ』によって優秀主演男優賞を受賞した。
日本アカデミー賞の公式受賞記録にも、市川海老蔵の名前と同作品が掲載されている。
ここで注意したいのは、優秀主演男優賞と最優秀主演男優賞は別の賞だという点だ。市川海老蔵が受賞したのは優秀主演男優賞であり、最優秀主演男優賞を受賞したという意味ではない。
この受賞は、歌舞伎の世界で高い評価を受けてきた俳優が、映画という異なる表現領域でも主演俳優として認められた実績である。
歌舞伎の舞台で培った表現力が、映像作品の中でも通用することを示した代表的な出来事といえる。
【2026年最新】三池崇史監督の映画『襲名』が映す團十郎の現在
2026年の市川團十郎を語るうえで、新たな注目作となっているのがドキュメンタリー映画『襲名』だ。
2026年9月25日に全国公開された本作は、三池崇史監督が手がけた初のドキュメンタリー映画。十三代目市川團十郎白猿の襲名披露公演と、その舞台裏を記録している。
映画『襲名』の基本情報- 作品名:襲名
- 公開日:2026年9月25日
- 監督:三池崇史
- 出演:市川團十郎、市川新之助ほか
- ナレーション:杏
- 祝幕:村上隆
- 配給:K2 Pictures
- ジャンル:ドキュメンタリー
作品が追いかけるのは、2022年に実現した十三代目市川團十郎白猿の襲名披露だ。
コロナ禍によって約2年半延期された襲名披露公演。その実現までの過程を3年以上にわたる撮影で記録し、名跡を受け継ぐことの責任や、個人としての思いに迫っている。
また、襲名披露の祝幕を手がけた現代美術家・村上隆の創作過程も作品に収められている。伝統芸能と現代アートが交差する点も見どころの一つだ。
ヴェネチア国際映画祭での受賞本作は2026年9月、第83回ヴェネチア国際映画祭のアウト・オブ・コンペティション部門で上映された。
加えて、映画祭の公式独立賞である「Cinema & Arts Award」の最優秀作品賞を受賞。受賞発表は現地時間9月11日で、日本映画として同賞の最優秀作品賞を初めて受賞した作品となった。
これは通常のコンペティション部門の最高賞である金獅子賞とは異なる賞だが、映画と舞台芸術などの融合を評価する独立賞での受賞という点で意義がある。
映画『襲名』は、単に有名歌舞伎俳優の仕事を紹介する作品ではない。十三代目市川團十郎という名前を背負うことが、本人や次の世代にとってどのような意味を持つのかを映し出す作品だ。
『利休にたずねよ』で映画俳優として評価された過去に対し、『襲名』は本人の芸と人生、そして歌舞伎の継承そのものを映像で伝える現在の仕事と位置づけられる。
【プロの結論】市川團十郎は歌舞伎と映画の両方で評価される俳優
市川海老蔵という名前から市川團十郎という名前へ。2022年の襲名は、俳優としての活動が終わったり、別の人物に変わったりしたことを意味しない。
むしろ、これまで積み上げてきた経験を土台に、より大きな名跡と責任を引き継いだ転換点だった。
俳優として評価するための3つの視点1. 古典歌舞伎を受け継ぐ技術と経験
1999年に『勧進帳』の弁慶を初めて演じて以来、成田屋の芸を担う俳優として経験を積んできた。歌舞伎十八番の演目に取り組む姿は、歴代團十郎から続く伝統を現代につなぐものだ。
2. 映像作品でも発揮される身体表現
『利休にたずねよ』での千利休役や『一命』での津雲半四郎役など、歴史や時代背景を持つ人物を演じてきた。舞台で身につけた所作、視線、姿勢、声の使い方は、映画でも独自の存在感につながっている。
3. 名跡の継承を次の世代へ伝える役割
2026年の映画『襲名』では、團十郎自身の襲名だけでなく、市川新之助との親子での継承も重要な題材となっている。伝統を守ることと、新しい観客に歌舞伎を届けること。その両立が現在の活動の大きなテーマだ。
「市川海老蔵」と「市川團十郎」の混同に注意検索結果や過去の映画情報には、市川海老蔵という名前が数多く残っている。そのため、2026年の出演情報を探す際に旧芸名と現在の芸名を混同するケースがある。
基本的には、2004年から2022年11月までが十一代目市川海老蔵、それ以降が十三代目市川團十郎白猿と整理すれば分かりやすい。
また、日本アカデミー賞の受賞歴を調べる場合も、「優秀主演男優賞」と「最優秀主演男優賞」を区別する必要がある。正確な受賞歴を確認するなら、日本アカデミー賞の公式記録を基準にするのが適切だ。
歌舞伎を中心に鑑賞したい人は『勧進帳』や『助六』などの古典演目から、映画俳優としての魅力を知りたい人は『利休にたずねよ』『一命』『襲名』から触れると、それぞれ異なる魅力を理解しやすい。
市川海老蔵の現在と俳優活動に関するよくある質問(FAQ)
Q1:市川海老蔵は2026年現在、何という名前で活動していますか?
A1:現在は十三代目市川團十郎白猿として活動しています。2022年11月に歌舞伎座で襲名しました。市川海老蔵は2004年から2022年まで使用していた旧芸名です。
Q2:市川團十郎の本名と年齢は?
A2:本名は堀越寶世(ほりこし・たかとし)です。1977年12月6日生まれで、2026年11月4日時点では48歳です。東京都出身で、屋号は成田屋です。
Q3:市川海老蔵は『利休にたずねよ』でどの賞を受賞しましたか?
A3:2014年の第37回日本アカデミー賞で優秀主演男優賞を受賞しました。演じた役は千利休です。最優秀主演男優賞とは異なる賞である点に注意してください。
Q4:市川團十郎と『勧進帳』にはどのような関係がありますか?
A4:『勧進帳』は成田屋の家の芸である歌舞伎十八番の一つです。團十郎は1999年に弁慶を初役で演じ、2026年10月の南座公演でも同役を勤めています。
Q5:2026年に公開された市川團十郎の映画は何ですか?
A5:2026年9月25日に全国公開されたドキュメンタリー映画『襲名』です。三池崇史監督が、2022年の十三代目市川團十郎白猿襲名披露とその舞台裏を記録しています。第83回ヴェネチア国際映画祭の公式独立賞「Cinema & Arts Award」最優秀作品賞も受賞しました。
市川海老蔵として知られる俳優は、2026年現在、十三代目市川團十郎白猿として成田屋の伝統を担っている。本名は堀越寶世。1983年の初御目見得から歌舞伎の舞台に立ち、2004年の十一代目市川海老蔵襲名を経て、2022年に十三代目市川團十郎を襲名した。
映画では『出口のない海』『一命』『利休にたずねよ』『喰女-クイメ-』などに出演。特に『利休にたずねよ』での千利休役は、日本アカデミー賞優秀主演男優賞という実績につながった。
そして2026年は、ドキュメンタリー映画『襲名』の全国公開とヴェネチア国際映画祭での受賞という新たな節目を迎えた。11月の壇ノ浦歌舞伎、12月の歌舞伎座公演など、舞台活動も続いている。
市川團十郎の俳優としての価値は、単に有名な芸名や映画賞だけでは測れない。300年以上続く名跡の歴史を背負いながら、古典歌舞伎の技を磨き、映画や新しい舞台表現にも挑戦していることにある。
市川海老蔵という名前を知っている人にとっても、現在の市川團十郎の活動を追うことは、歌舞伎という伝統芸能がどのように次の時代へ受け継がれていくのかを知る手がかりになるはずだ。