鬼十則(おにじっそく)とは、電通の第4代社長・吉田秀雄が掲げた、仕事に対する姿勢や行動の心得をまとめた10項目の行動指針です。1951年に制定されたとされ、戦後の日本広告業界を牽引した電通の企業文化を象徴する言葉として、長年にわたり社員の間で知られてきました。
一方、「取り組んだら放すな。殺されても放すな」という厳しい表現は、2015年の高橋まつりさんの過労自殺問題をきっかけに、長時間労働やパワーハラスメントを助長する企業風土との関係が厳しく問われました。電通は2016年12月9日、社員手帳などへの鬼十則の掲載・掲出を取りやめると発表しています。2026年現在、この決定はどのような意味を持ち、鬼十則はどう評価されているのでしょうか。
【鬼十則とは?】吉田秀雄が掲げた10項目の一覧と意味を解説

鬼十則は、電通の社員に向けて示された仕事上の心得です。
掲げた人物は、1903年生まれの吉田秀雄。1947年に電通の第4代社長に就任し、日本の広告産業の近代化や民間放送の発展に大きく貢献した経営者です。
「広告の鬼」と呼ばれた吉田の仕事に対する厳しい姿勢を象徴するものとして、鬼十則は社内で長く受け継がれてきました。
鬼十則の全10項目一覧以下は、各条文の趣旨を現代の日本語で整理したものです。
第1則:仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。
仕事を受け身で待つのではなく、自分で課題を発見し、新しい仕事や価値を生み出す姿勢を求めています。
単に指示された作業をこなすのではなく、自分から考えて行動することが基本です。
第2則:仕事とは先手先手と働きかけていくことで、受け身でやるものではない。
問題が発生してから対応するのではなく、先回りして行動することの大切さを説いています。
顧客の要望や状況の変化を予測し、自分から提案する積極性を重視した考え方です。
第3則:大きな仕事と取り組め。小さな仕事は己を小さくする。
自分の可能性を狭めず、大きな目標や社会的な影響力のある仕事に挑戦することを勧めています。
ただし、小さな仕事を軽視するという意味に解釈するのは適切ではありません。
第4則:難しい仕事を狙え。そして、それを成し遂げるところに進歩がある。
簡単な仕事だけを選ぶのではなく、困難な課題に挑戦することで能力を伸ばせるという教えです。
失敗を恐れず、新しい知識や技術を身につける姿勢につながります。
第5則:取り組んだら放すな。目的完遂までは。
鬼十則のなかでも、特に広く知られている条文です。
「取り組んだら『放すな』。殺されても放すな。目的完遂までは。」
一度始めた仕事に責任を持ち、最後までやり遂げるという意味です。
しかし、文字どおり無制限に働くことや、健康を犠牲にしてまで仕事を続けることを正当化する表現として受け取られる危険性があります。
第6則:周囲を引きずり回せ。
周囲の動きを待つのではなく、自分が主体となって人を動かし、仕事を進めることを意味します。
リーダーシップや推進力を重視した考え方ですが、現代では他者の意思を尊重することも欠かせません。
第7則:計画を持て。
目先の成果だけでなく、長期的な計画を立てることの重要性を説いています。
長期的な見通しがあれば、忍耐や工夫、継続的な努力につながるという考え方です。
第8則:自信を持て。
自分の能力や判断に自信を持ち、仕事に主体的に取り組むことを求めています。
自信が行動の力となり、仕事の説得力や粘り強さにつながるという意味です。
第9則:頭は常に全回転。
周囲の状況に広く注意を払い、細部まで気を配ることを求めています。
顧客や関係者の期待を理解し、サービスの質を高めるために、常に考え続ける姿勢を示しています。
第10則:摩擦を恐れるな。
意見の違いや対立を避けるだけではなく、建設的な議論を通じて物事を前進させることを重視しています。
異なる考え方をぶつけ合うことが、新しい発想や進歩につながるという教えです。
10項目に共通する仕事観とは?鬼十則全体を整理すると、次の5つの考え方に集約できます。
- 主体性:自分で仕事を生み出す。
- 積極性:先回りして課題に取り組む。
- 挑戦心:難しい目標から逃げない。
- 責任感:仕事を最後までやり遂げる。
- 推進力:周囲と協力しながら成果を追求する。
吉田秀雄が重視したのは、単に長時間働くことではなく、仕事に対して主体的に向き合い、成果を生み出す姿勢だったと読み取れます。
ただし、各条文の表現には、個人の努力と組織への従属を混同させかねない部分もあります。この二面性が、鬼十則に対する評価を分ける大きな要因になっています。
【1951年の成立背景】吉田秀雄と電通の歴史から読み解く鬼十則の由来
鬼十則が生まれた背景を理解するには、制定者である吉田秀雄の経歴と、当時の日本の広告業界を知る必要があります。
吉田秀雄とは?電通の中興の祖と呼ばれた経営者吉田秀雄は1903年11月、福岡県小倉に生まれました。
1928年に東京帝国大学を卒業し、日本電報通信社(現在の電通)に入社。広告営業の分野で実績を重ね、1947年6月23日に第4代社長へ就任しました。
当時の広告業界は、旧来の商慣行が残る発展途上の産業でした。
吉田は広告業の社会的地位を高めることを目指し、広告取引の合理化や近代化、広告活動の国際化などに取り組みました。
特に注目されたのが、民間放送の発展への貢献です。
1951年には民間ラジオ放送が始まり、1953年には民間テレビ放送もスタートしました。広告の媒体が広がるなかで、電通も新しい広告ビジネスの形を模索していきます。
電通の公式企業史や吉田秀雄記念事業財団の資料にも、吉田が日本の広告産業の近代化を推進した経緯が記録されています。
1951年に鬼十則が制定された理由鬼十則は1951年に制定されたとされています。
この年は、日本の商業放送が本格的に始まった重要な転換期でした。
戦後の復興が進み、企業活動や広告市場が拡大するなか、広告会社にも従来以上の企画力、営業力、実行力が求められるようになっていました。
吉田は、電通の社員が指示を待つのではなく、自ら考えて行動し、競争のなかで成果を出せる組織を目指していました。
鬼十則には、こうした経営思想が反映されていると考えられます。
なお、1951年という制定年と、戦後の広告産業の発展は歴史的に重なっていますが、個々の条文がどのような会議や出来事を経て生まれたかという詳細まで、一律に確定しているわけではありません。
吉田秀雄は仕事一筋だったのか?吉田秀雄には「広告の鬼」という印象的な呼び名があります。
しかし、吉田の仕事観を厳しさだけで捉えるのは正確ではありません。
朝日新聞の報道をもとにしたwithnewsの記事では、吉田が1959年に社内で出した訓示として、広告の仕事における休養や睡眠の重要性を説いた文章が紹介されています。
そこでは、夜更かしを重ねることへの戒めや、若くして健康を損なう社員への懸念が示されていました。
この事実は、鬼十則の一部だけを切り取って、吉田の仕事観全体を説明することの難しさを示しています。
仕事への情熱と、健康を維持する必要性は、必ずしも相反するものではなかったのです。
【鬼十則はなぜ廃止された?】2015年から2017年までの経緯を時系列で整理
鬼十則が大きな社会問題として注目されたのは、2015年から2016年にかけて発生した電通の過労自殺問題がきっかけでした。
特に第5則の「殺されても放すな」という表現が、長時間労働を当然視する企業風土を象徴しているのではないかと批判されました。
高橋まつりさんの過労自殺と鬼十則への批判2015年12月25日、電通の新入社員だった高橋まつりさんが24歳で亡くなりました。
高橋さんは2015年4月に入社し、インターネット広告関連の業務を担当していました。
2016年9月30日、三田労働基準監督署は長時間労働による過労が原因として労災認定しました。
この問題は、日本企業の長時間労働や若手社員への過度な業務負担、職場でのハラスメントをめぐる議論を大きく広げました。
そのなかで、電通の伝統的な仕事の心得として知られていた鬼十則にも批判が集まります。
もちろん、鬼十則という文章だけが過労自殺の原因だったと断定することはできません。しかし、仕事を完遂するために自分を犠牲にするような考え方と、当時の労働環境との関係が社会的な検証対象になりました。
2016年11月に電通労働環境改革本部が発足電通は2016年11月1日、「電通労働環境改革本部」を設置しました。
公式発表では、長時間労働の撲滅や労働環境の改善を目指し、組織や人事制度、業務フローなどを含めた抜本的な改革を進める方針を示しています。
当初から取り組まれた主な施策には、次のものがあります。
- 22時以降の業務を原則禁止する。
- 22時から翌朝5時まで全館消灯する。
- 長時間労働を抑制するための勤務管理を徹底する。
- 社員の意見を取り入れた改革案を策定する。
- 労働環境や働き方に関する社内教育を進める。
鬼十則の見直しは、こうした企業文化の改革と一体となって進められました。
2016年12月9日に社員手帳への掲載終了を発表電通は2016年12月9日、「多様な価値観とワークライフバランスを大切にする新たな企業文化の創造に向けた取り組みについて」というニュースリリースを公表しました。
そのなかで、吉田秀雄が残した鬼十則について、社員手帳などへの掲載・掲出を取りやめると明らかにしています。
同時に発表された施策には、管理職を部下が評価する360度評価制度の導入や、有給休暇取得率50%以上を目指す組織管理指標なども含まれていました。
つまり、鬼十則の掲載終了は、単なる社内文書の変更ではなく、従来の企業文化を見直す一連の改革の一環だったのです。
鬼十則をめぐる重要な出来事の年表| 年月 | 出来事 | 意味・背景 |
|---|---|---|
| 1947年 | 吉田秀雄が第4代社長に就任 | 電通の経営近代化を推進 |
| 1951年 | 鬼十則が制定されたとされる | 社員の仕事に対する行動指針 |
| 2015年12月 | 高橋まつりさんが亡くなる | 長時間労働問題が深刻化 |
| 2016年9月30日 | 過労による労災認定 | 電通の労働環境が社会問題に |
| 2016年11月1日 | 労働環境改革本部が発足 | 全社的な改革を開始 |
| 2016年12月9日 | 鬼十則の掲載・掲出終了を発表 | 新たな企業文化への転換 |
| 2017年度 | 社員手帳への掲載を終了 | 従来の掲載形式を変更 |
| 2023年 | 調査検証報告書を公表 | 組織風土や企業文化の問題を再検証 |
| 2026年 | 労働環境改革の進捗を公開 | 労働時間や相談件数などを公表 |
ここは誤解されやすい部分です。
電通が2016年12月9日に公式発表した表現は、鬼十則の「社員手帳等への掲載・掲出を取り止める」というものです。
したがって、正確には次のように整理できます。
- 社員手帳への掲載:2017年度から終了。
- 社内での掲出:取りやめを発表。
- 歴史的な文書としての存在:消滅したわけではない。
- 社会的・文化的な評価:その後も議論が続いている。
鬼十則という歴史的な文章そのものを法律上禁止したわけでも、過去の経営理念をすべて抹消したわけでもありません。
一般に「鬼十則の廃止」と表現されますが、公式発表の内容を踏まえれば、社員向けの掲載・掲出を終了したという理解が正確です。
【鬼十則はパワハラを助長したのか?】評判と評価、問題点を検証
鬼十則への評価は、大きく分けて肯定的なものと否定的なものがあります。
肯定的な評価では、主体性、挑戦心、責任感を育てる仕事の心得として支持されてきました。
一方、否定的な評価では、社員に過度な責任を負わせ、長時間労働や精神的な圧力を正当化しかねない表現が問題視されています。
肯定的な評価:主体性と挑戦する精神を育てる鬼十則の第1則、第2則、第4則、第7則などは、現在のビジネスでも通用する考え方を含んでいます。
例えば、次のような場面では参考になる部分があります。
- 指示待ちではなく、自分から課題を見つける。
- 顧客の問題を先回りして考える。
- 難しい目標に挑戦して能力を伸ばす。
- 短期的な成果だけでなく、長期計画を持つ。
- 意見の違いを恐れず、建設的な議論を行う。
特に、自分の仕事に責任を持つ姿勢や、新しいことに挑戦する精神は、業種を問わず重要な能力です。
このため、鬼十則を単純に時代遅れの精神論として切り捨てるのではなく、現代にも通用する部分を見極める評価もあります。
否定的な評価:長時間労働やパワハラにつながる危険性問題視されているのは、仕事への情熱が自己犠牲の要求に変わってしまうことです。
特に第5則の「殺されても放すな」は、仕事の完遂を健康や生命より優先するような印象を与えます。
第6則の「周囲を引きずり回せ」も、解釈によっては周囲の意見を無視した強引なマネジメントにつながりかねません。
第10則の「摩擦を恐れるな」についても、建設的な意見交換ではなく、対立や威圧的な言動を肯定するように使われれば問題です。
重要なのは、仕事への責任感と、労働者の権利や健康を守る責任は両立しなければならないという点です。
仕事をやり遂げるために必要な努力と、限界を超えて働くことは同じではありません。
2023年の調査検証報告書が指摘した組織風土鬼十則の問題を考えるうえで参考になるのが、2023年6月9日に公表された電通グループの調査検証委員会による報告書です。
この報告書は、2015年の高橋まつりさんの過労自殺事件そのものを調査したものではなく、東京2020オリンピック・パラリンピック関連事案を検証したものです。
ただし、電通の組織風土を分析するなかで、鬼十則にも言及しています。
報告書は、長年、従業員の行動規範とされてきた鬼十則の第5則を取り上げ、成果を上げることへの強い姿勢や、一部社員の特別意識について考察しました。
また、同報告書が対象とした事案当時の人事評価では、評価点数の9割が成果評価に割り振られていたと説明しています。
これは、成果を重視する制度が、適正なプロセスよりも結果を優先する仕事の姿勢につながり得るという問題を示したものです。
注目すべきなのは、報告書が問題の背景を鬼十則だけに求めていないことです。
指摘された要因には、次のようなものが含まれます。
- 過剰なクライアント・ファーストの組織風土。
- 成果に大きく偏った人事評価。
- コンプライアンスリスクへの感度の鈍さ。
- 率直に問題提起しにくい心理的環境。
- 法務・コンプライアンス部門の相対的な弱さ。
つまり、企業文化はスローガンだけで形成されるものではありません。人事評価、組織運営、上司と部下の関係、問題を指摘できる仕組みなどが複雑に影響します。
鬼十則の掲載をやめることは一つの象徴的な変化ですが、それだけで組織の問題が解決するわけではないのです。
【2026年現在の鬼十則と電通】労働環境改革はどこまで進んだ?
2026年現在、鬼十則は歴史的な仕事の心得として知られていますが、電通の労働環境改革は現在も継続しています。
その実態を把握するうえで参考になるのが、電通が公式サイトで公開している労働環境改革の進捗データです。
2026年度第2四半期の労働環境データ電通が公表した2026年度第2四半期(2026年4月1日~6月30日)の実績は、次のとおりです。
電通の労働環境改革・2026年6月30日時点
0名
三六協定超過者数(月次)
0名
三六協定超過者数(日次)
12.8時間
1人当たり法定外労働時間(月間平均)
20件
ハラスメント相談件数(4~6月合計)
前年同期比:法定外労働時間は1.1時間増加、ハラスメント相談件数は5件増加。相談件数は認定されたハラスメント事案の件数ではありません。
このデータからは、三六協定の超過者が月次・日次ともに0名となっていることが分かります。
一方、法定外労働時間は前年同期より1.1時間増加しています。また、ハラスメント関連の相談件数も前年同期より5件増えています。
相談件数が増えたことは、それだけでハラスメントが増加した証拠にはなりません。相談窓口の利用しやすさや、社員が問題を申告する意識の変化も関係するためです。
したがって、数字の一部だけを見て改革が完全に成功したと判断することはできません。
2026年の働きがいランキングでは電通が総合2位2026年2月5日、電通はOpenWorkが発表した「働きがいのある企業ランキング2026」で、総合2位に選ばれたと発表しました。
ランキング対象は19,681社です。
電通は2024年に3位、2025年に1位となっており、2026年もトップ3を維持しています。
2026年の部門別順位は以下のとおりです。
- 総合編:2位
- 社員の士気編:3位
- 人材の長期育成編:9位
- 社員の相互尊重編:1位
このランキングは、現職社員および2025年中に退職した従業員が2025年に投稿した評価をもとに、8つの評価項目を分析したものです。
社員の相互尊重が1位という結果は、かつての厳しい企業文化からの変化を考えるうえで興味深い材料です。
ただし、企業ランキングは社員の評価を集計した指標であり、すべての部署や社員の働きやすさを保証するものではありません。
鬼十則は2026年に復活したのか?2026年現在、確認できる電通の公式資料では、2016年に発表した社員手帳などへの掲載・掲出終了が歴史的な節目となっています。
鬼十則が社内手帳に再掲載されたという公式発表は確認できません。
一方、2023年の調査検証報告書では、鬼十則が過去の従業員行動規範として取り上げられています。
つまり、鬼十則は歴史から消されたわけではありません。
現在の位置づけを理解するには、次の3点を区別することが大切です。
1. 歴史的価値: 吉田秀雄の経営思想を理解する資料として残っている。
2. 社内での扱い: 2017年度から社員手帳への掲載が終了した。
3. 現代の評価: 仕事への主体性は評価される一方、自己犠牲や過剰な成果主義につながる解釈は問題視されている。
【現代の働き方から考える鬼十則】仕事に活かせる教訓と捨てるべき考え方
鬼十則には、時代が変わっても通用する考え方があります。
しかし、1951年当時の仕事観を、そのまま2026年の職場に持ち込むことは適切ではありません。
現代の企業に求められるのは、成果を追求しながら、社員の健康、尊厳、生活を守る仕組みを整えることです。
現代でも活かせる5つの考え方| 鬼十則の趣旨 | 現代的な活用方法 |
|---|---|
| 自ら仕事を創る | 自発的に課題を発見し提案する |
| 先手で働きかける | 問題を予測して早めに対応する |
| 難しい仕事に挑む | 適切な支援のもとで成長機会を得る |
| 計画を持つ | 長期目標と現実的な工程を設定する |
| 摩擦を恐れない | 相手を尊重しながら議論する |
これらは、主体性や課題解決能力を育てるうえで有効です。
ただし、実践する際には、本人の能力や業務量、組織の支援体制を考慮しなければなりません。
現代では避けるべき5つの解釈反対に、次のような解釈は避ける必要があります。
- 仕事を完成させるためなら健康を犠牲にしてよい。
- 上司の指示には無条件で従うべきだ。
- 周囲を自分の思いどおりに動かしてよい。
- 休暇や休息は仕事への責任感が足りない証拠だ。
- 意見の衝突を理由に相手を威圧してよい。
これらは鬼十則の現代的な活用ではなく、過度な自己犠牲やハラスメントにつながりかねない解釈です。
仕事に対する責任感と、会社に対する無条件の服従は別物です。
鬼十則を参考にしてよい人・注意が必要な人鬼十則は、読む人の立場や職場環境によって受け止め方が変わります。
参考にしやすい人
- 自分から仕事を進める力を身につけたい人。
- 新しい仕事や難しい課題に挑戦したい人。
- 長期的な目標を立てて成長したい人。
- チーム内で建設的な議論をしたい人。
注意が必要な人・職場
- 長時間労働が常態化している職場。
- 休暇取得を否定的に評価する組織。
- 上司の指示に異論を唱えられない環境。
- 成果だけが評価され、健康や過程が軽視される組織。
- 精神論を使って社員に過度な負担を求める管理職。
とりわけ管理職は、鬼十則の第5則や第6則を部下に押しつけるのではなく、仕事を遂行するための適切な人員配置や業務量の調整を考える必要があります。
【プロの結論】鬼十則の価値は、現代の労働環境に合わせて再解釈できるか鬼十則の本質には、仕事を自ら生み出し、困難に挑戦し、成果を追求するという積極的な仕事観があります。
その考え方は、2026年のビジネスでも十分に参考になります。
一方、成果を出すために社員の健康や生活を犠牲にすることは、企業の持続的な成長にもつながりません。
2016年の掲載終了は、長年受け継がれてきた仕事の心得を、企業文化や労働環境との関係から見直す転換点でした。
そして2023年の調査検証報告書や2026年の労働環境データは、組織改革がスローガンの変更だけでは完結しないことを示しています。
これからの仕事観に必要なのは、鬼十則の「挑戦する精神」を残しながら、「何があっても働き続ける」という自己犠牲の考え方を手放すことです。
【鬼十則に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:鬼十則とは誰が作ったものですか?
A1:電通の第4代社長・吉田秀雄が掲げた仕事の心得です。1951年に制定されたとされ、全10項目から構成されています。
Q2:鬼十則はなぜ廃止されたのですか?
A2:2015年の高橋まつりさんの過労自殺問題を受け、電通の企業風土や長時間労働に対する批判が高まりました。2016年12月9日、電通は新たな企業文化の創造に向けて、社員手帳などへの掲載・掲出を取りやめると発表しました。
Q3:鬼十則は現在も電通で使われていますか?
A3:2017年度から社員手帳への掲載が終了しています。2026年現在、再掲載を告知する公式発表は確認できません。ただし、歴史的な経営思想としては資料や調査報告書に残っています。
Q4:鬼十則はパワハラにつながる内容ですか?
A4:鬼十則そのものが直ちにパワハラに該当するわけではありません。しかし、第5則の自己犠牲を促すような表現や、第6則の周囲を強引に動かすような解釈は、職場環境によって過度な圧力につながる危険性があります。
Q5:鬼十則のなかで現代にも通用する項目はどれですか?
A5:第1則の主体性、第2則の積極性、第4則の挑戦、第7則の計画性、第10則の建設的な議論などは、現代の仕事にも活用できます。ただし、健康や人権を犠牲にしないことが前提です。
Q6:鬼十則は2026年現在も評価されていますか?
A6:仕事への主体性や挑戦する精神については肯定的な評価があります。一方、過重労働や成果至上主義を助長しかねない表現については批判も続いています。歴史的な価値と現代の労働環境における問題点を分けて考えることが大切です。
鬼十則は、電通第4代社長・吉田秀雄が掲げた10項目の仕事の心得であり、1951年に制定されたとされています。
戦後の広告産業が発展するなかで、主体性、挑戦心、責任感を重視する経営思想として受け継がれてきました。
しかし、2015年の高橋まつりさんの過労自殺問題を契機に、鬼十則の厳しい表現と企業文化の関係が社会的な批判を集めます。2016年12月9日には、電通が社員手帳などへの掲載・掲出終了を発表しました。
2026年現在も、鬼十則は仕事に対する考え方を議論する際の重要な歴史的題材です。
評価する際に大切なのは、10項目を無条件に肯定したり否定したりすることではありません。
- 主体性や挑戦心は積極的に取り入れる。
- 成果への責任と自己犠牲を混同しない。
- 周囲を尊重し、健全なチームワークを築く。
- 仕事の成果と社員の健康を両立させる。
- 精神論ではなく、制度や組織運営によって働きやすさを実現する。
鬼十則が残した最大の教訓は、仕事に対する情熱だけでは、健全な企業文化は成立しないということです。
本当に強い組織とは、社員に限界まで努力させる組織ではなく、一人ひとりが健康と尊厳を守りながら、能力を最大限に発揮できる組織なのです。