ペットショップの売れ残り問題を考えるうえで、最も重要なのが「動物の愛護及び管理に関する法律」、通称・動物愛護管理法です。
この法律は、ペットショップやブリーダーなどの動物取扱業者に対して、動物の健康と安全を守るための義務を課しています。
特に注目したいのは、第一種動物取扱業の登録制度、犬猫等健康安全計画、終生飼養、56日齢規制の4つです。
1. 第一種動物取扱業の登録が必要ペットショップで犬猫を販売する場合、原則として第一種動物取扱業の「販売」に該当し、事業所や業種ごとに都道府県知事などの登録を受ける必要があります。
登録業者には、次のような義務があります。
- 適切な飼育スペースの確保
- 給餌・給水と衛生管理
- 動物の健康状態の確認
- 獣医師との連携
- 販売時の現物確認と対面説明
- 動物の所有・販売・死亡などに関する帳簿の作成と保存
環境省によると、事業者には必要に応じて行政の立入検査が行われ、基準違反などがあれば改善勧告や命令、登録取消し、業務停止命令の対象になる場合があります。
2. 犬猫等健康安全計画とは?犬猫等健康安全計画は、犬や猫を販売する事業者が、動物の健康と安全を確保するために策定する計画です。
単に販売方法を定めるだけのものではありません。
重要なのは、販売が難しくなった犬猫についても、どのように飼育し、どこに譲渡するのかをあらかじめ考えておくことです。
主な記載事項には次の内容があります。
- 幼齢犬猫の健康状態を確認する体制
- 獣医師との連携方法
- 仕入れ方法などの需給調整
- 販売が困難になった犬猫の具体的な取扱い
- 動物愛護団体などとの連携
- 飼育施設や展示方法の管理
環境省の計画に関する資料でも、販売が困難になった犬猫の譲渡先や愛護団体との連携が具体的な項目として示されています。
3. 動物愛護管理法第22条の4「終生飼養の確保」この条文は、売れ残り犬猫の問題に直接関係します。
法律では、犬猫等販売業者について、販売することが困難になった犬猫であっても、やむを得ない場合を除き、引き続き終生飼養を確保するよう定めています。
つまり、販売できなくなったことを理由に、動物を安易に放棄したり、飼育責任を放り出したりすることは認められません。
ここでいう終生飼養は、単に生存させればよいという意味ではありません。
- 適切な食事と水を与える
- 健康状態を管理する
- 必要な医療を受けさせる
- 快適な飼育環境を維持する
- 高齢になっても必要なケアを続ける
こうした飼育を生涯にわたって確保することが大切です。
4. 犬猫の56日齢規制とは?生後間もない犬猫を販売することにも、法律上の制限があります。
犬猫は、生後56日を経過するまで、販売目的での引き渡しや展示が原則禁止されています。
これは、親や兄弟姉妹と過ごす期間を確保し、社会性や健康な発育を促すための規制です。
環境省は、幼齢期に親や兄弟姉妹と過ごすことによって、かみつきや吠え方の加減を学び、免疫力や社会性を身につけることにつながると説明しています。
なお、天然記念物に指定された日本犬6種について、専門の繁殖業者が一般の購入者に直接販売する場合には、生後49日を基準とする限定的な特例があります。一般のペットショップ販売に適用される例外ではありません。
法律・制度と売れ残り犬猫の関係| 制度・条文 | 内容 | 売れ残り問題との関係 |
|---|---|---|
| 第一種動物取扱業 | 販売業者の登録制度 | 適正な営業と飼育管理を監督 |
| 第22条の2 | 健康安全計画の遵守 | 計画に沿った業務を義務付け |
| 第22条の3 | 獣医師との連携 | 犬猫の健康と安全を確保 |
| 第22条の4 | 終生飼養の確保 | 販売困難な犬猫も生涯飼育 |
| 第22条の5 | 幼齢犬猫の販売制限 | 原則56日齢未満の販売等を禁止 |
| 第21条の4 | 販売時の情報提供 | 現物確認と対面説明を義務付け |
| 第35条 | 自治体による引取り | 販売業者からの引取りを拒否できる場合がある |
【殺処分の実態】2026年に確認できる犬猫の全国統計と売れ残り問題

ペットショップの売れ残り犬猫について調べる際、必ず確認しておきたいのが環境省の統計です。
ただし、自治体が引き取った犬猫の統計と、ペットショップの販売実績は別物です。
2026年11月時点で環境省が公表している全国最新の集計は、2024年度(令和6年度)の実績です。
2024年度の犬猫の引取り・譲渡・殺処分数出典:環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」
| 区分 | 犬 | 猫 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 引取り数 | 17,399頭 | 22,010頭 | 39,409頭 |
| 返還数 | 6,630頭 | 225頭 | 6,855頭 |
| 譲渡数 | 8,797頭 | 16,854頭 | 25,651頭 |
| 殺処分数 | 1,964頭 | 4,866頭 | 6,830頭 |
この数字から分かるのは、自治体に引き取られた犬猫のうち、多くが元の飼い主への返還や新しい飼い主への譲渡につながっていることです。
一方、殺処分数は犬が1,964頭、猫が4,866頭で、合計6,830頭でした。
猫の殺処分数が犬を上回っていることも特徴です。
殺処分数6,830頭には何が含まれる?ここで注意したいのが、環境省の「殺処分数」の分類です。
実は、この数字には異なる3つの区分があります。
① 譲渡することが適切ではない動物
治癒の見込みがない病気や重いけが、著しい苦痛、重大な感染症、人やほかの動物に危害を及ぼす可能性などを理由に、譲渡が適切ではないと判断された動物です。
② 譲渡先の確保や適切な飼育管理が困難な動物
譲渡先が見つからない場合や、施設の収容能力、飼育管理上の制約などによって、譲渡や保管が困難と判断された動物です。
③ 引取り後に死亡した動物
自治体が引き取った後、運搬中や飼育管理中に、病気、老衰、事故などによって死亡した動物です。
環境省の分類資料では、この③も統計上の殺処分数に含まれています。したがって、6,830頭すべてが人為的に殺処分されたという意味ではありません。
10年間で殺処分数は大きく減少環境省の長期統計を比較すると、犬猫の殺処分数は大幅に減っています。
- 2014年度:101,338頭
- 2020年度:23,764頭
- 2022年度:11,906頭
- 2023年度:9,017頭
- 2024年度:6,830頭
2026年4月17日の衆議院環境委員会でも、環境省側から令和6年度の犬猫の引取り数や殺処分数について説明がありました。
政府参考人は、殺処分数が2014年度の約10万1,000頭から2024年度には約7,000頭まで減少したこと、返還・譲渡率が33.2%から82.5%に向上したことを説明しています。
自治体による返還・譲渡の促進が、殺処分数の減少に寄与しているとの認識も示されました。
ペットショップの売れ残り犬猫も6,830頭に含まれる?ここは誤解しやすい部分です。
6,830頭という数字を、ペットショップで売れ残った犬猫の殺処分数として扱うことはできません。
環境省の統計が対象としているのは、自治体による犬猫の引取りや処分です。飼い主からの引取り、所有者不明の動物、負傷動物など、さまざまな経緯の犬猫が関係しています。
そのため、ペットショップで売れ残った犬猫が何頭いたのか、どの程度が譲渡されたのか、どれだけが死亡したのかを、この統計だけから算出することはできません。
また、動物愛護管理法第35条では、犬猫等販売業者から引取りを求められた場合、自治体が引取りを拒否できる規定があります。
つまり、ペットショップが売れ残った犬猫を当然のように保健所へ持ち込める制度ではありません。
殺処分数の減少は重要な進展ですが、ペットショップの売れ残り問題が解決したことを意味するわけではありません。
【譲渡・里親制度】売れ残った犬猫を迎えるには?引き取り先と探し方
ペットショップで売れ残った犬猫を迎えたい場合、一般的な購入とは異なる譲渡の仕組みを理解しておくと安心です。
ペットショップから直接譲渡を受ける店舗によっては、販売が難しくなった犬猫について、新しい飼い主を募集することがあります。
この場合、最初に確認したいのは次の点です。
- なぜ譲渡対象になったのか
- いつから店舗で飼育されているのか
- これまでにどのような健康管理を受けたのか
- 譲渡費用や契約条件はどうなっているのか
- 譲渡後の医療相談やサポートがあるのか
「無料譲渡」と書かれていても、ワクチンや健康診断、不妊去勢手術などの費用が別途必要になる場合があります。
費用の内訳を契約前に確認しましょう。
動物愛護団体や保護団体を通じて迎える動物愛護団体や保護団体では、犬猫の新しい飼い主を探す活動が行われています。
団体によっては、飼育環境や家族構成、先住動物との相性などを確認したうえで譲渡を進めます。
一般的な譲渡の流れは次のとおりです。
1. 譲渡対象の犬猫を探す
2. 団体に問い合わせる
3. 飼育環境や希望条件について確認を受ける
4. 面会やトライアルを行う
5. 正式な譲渡契約を結ぶ
6. 終生飼養を開始する
譲渡団体によって審査基準や費用、トライアル期間は異なります。
自治体の動物愛護センターから迎える各自治体の動物愛護センターや保健所では、収容された犬猫の譲渡事業を実施しています。
ただし、自治体の譲渡対象はペットショップの売れ残りに限られません。迷子や飼い主のいない犬猫、さまざまな事情で引き取られた動物が対象となります。
また、前述のとおり、販売業者からの引取りについては自治体が拒否できるため、売れ残り犬猫が必ず公的施設に収容されるわけではありません。
譲渡先を選ぶ際に確認したいこと大切なのは、譲渡の看板や費用だけで判断しないことです。
- 犬猫の健康状態を説明してくれるか
- これまでの飼育履歴が分かるか
- 譲渡後の相談窓口があるか
- 終生飼養を前提とした契約になっているか
- 譲渡先の運営体制が明確か
犬猫にとって、新しい飼い主との生活は新たなスタートです。譲渡後も安心して暮らせる環境を整えられるかが、最も大切な判断基準になります。
【迎える前に必読】売れ残り犬猫の健康状態と確認すべきポイント
売れ残り犬猫を迎えることには、成長した動物ならではのメリットがあります。
例えば、成犬や成猫であれば、体格や性格がある程度分かっているため、将来の生活をイメージしやすい場合があります。
一方、長期間の飼育歴がある個体では、健康状態や生活習慣を詳しく確認する必要があります。
1. 病歴・ワクチン接種歴を確認するまず確認したいのは、これまでの医療記録です。
- 過去にかかった病気
- 現在治療中の疾患
- ワクチン接種の履歴
- 寄生虫予防の実施状況
- アレルギーの有無
- 遺伝性疾患についての情報
- 過去の手術や投薬の履歴
環境省が定める販売時の対面説明事項には、病歴やワクチン接種状況、親や同腹子の遺伝性疾患に関する情報なども含まれています。
2. 実際に犬猫の様子を観察する書類だけでは分からないこともあります。
実際に会ったときは、次の点を確認しましょう。
| 確認項目 | 見ておきたいポイント |
|---|---|
| 目 | 目やに、充血、左右の違い |
| 鼻・呼吸 | 鼻水、せき、呼吸の異常 |
| 耳 | 汚れ、におい、炎症 |
| 皮膚・被毛 | 脱毛、赤み、傷、かゆみ |
| 歩き方 | 足を引きずる、歩行の不自然さ |
| 食欲 | 食事量や食べ方 |
| 排せつ | 便や尿の状態 |
| 性格 | 人への反応、警戒心、落ち着き |
これらは家庭でできる初歩的な観察です。異常がないように見えても、病気が隠れている場合があるため、必要に応じて獣医師の診察を受けましょう。
3. マイクロチップの登録情報を確認する2022年6月1日から、ブリーダーやペットショップなどで販売される犬猫について、マイクロチップの装着が義務化されています。
そのため、ペットショップから犬猫を迎える場合は、マイクロチップの番号や登録証明書を確認してください。
購入後は、飼い主の情報に変更登録する必要があります。
変更登録は原則として取得後30日以内です。
譲渡の場合も、すでにマイクロチップが装着されている犬猫であれば、登録情報の変更が必要になります。
4. 契約書とアフターサポートを確認する特に値引き販売や譲渡の場合、契約内容を丁寧に確認することが大切です。
確認したい項目は次のとおりです。
- 譲渡・購入費用の総額
- 病気が判明した場合の対応
- 治療費の負担者
- 返金や契約解除に関する条件
- 譲渡後の相談窓口
- 不妊去勢手術の条件
- マイクロチップの登録手続き
口頭での説明だけで判断せず、契約書に記載されている内容を確認してください。
5. 売れ残り犬猫を迎えるのに向いている人・慎重に考えたい人売れ残り犬猫を迎えることは、必ずしも誰にでも向いているわけではありません。
迎えることを検討しやすい人
慎重に考えたい人
大切なのは、売れ残っていたという過去ではなく、これから生涯にわたって責任を持てるかどうかです。
【ペットショップ売れ残りに関するよくある質問(FAQ)】
Q1:ペットショップで売れ残った犬は何か月まで販売されますか?
A1:法律上、一律の販売終了月齢はありません。生後56日未満の販売等は原則禁止されていますが、6か月や1歳になった犬でも、適切な管理のもとで販売される場合があります。
Q2:売れ残った犬猫は必ず殺処分されるのでしょうか?
A2:いいえ。店舗で飼育を続ける方法や、新しい飼い主への譲渡、動物愛護団体との連携などがあります。販売業者には、原則として販売困難な犬猫の終生飼養を確保する義務があります。
Q3:売れ残った猫も犬と同じ法律で守られていますか?
A3:はい。動物愛護管理法の犬猫等販売業者に関する規制は、犬だけでなく猫にも適用されます。終生飼養の確保や健康管理などが大切です。
Q4:値引きされた犬猫は健康に問題があるのでしょうか?
A4:値引きの理由は、年齢、品種、毛色、体格、店舗の販売方針などさまざまです。値下げだけで健康状態を判断することはできません。病歴やワクチン接種歴、獣医師による診察結果を確認しましょう。
Q5:ペットショップは売れ残った犬猫を保健所に持ち込めますか?
A5:動物愛護管理法第35条では、犬猫等販売業者からの引取りについて、自治体が拒否できる規定があります。また、販売業者には原則として終生飼養を確保する義務があります。
Q6:売れ残り犬猫を無料で譲り受けることはできますか?
A6:店舗や動物愛護団体などの譲渡方針によって異なります。無料の場合もあれば、ワクチン、健康診断、不妊去勢手術などの費用負担が必要な場合もあります。事前に費用の内訳を確認してください。
ペットショップで売れ残った犬や猫のその後は、一律に決まっているわけではありません。
店舗で飼育を続ける場合もあれば、一般家庭への譲渡や動物愛護団体との連携によって、新しい生活を始める場合もあります。
2026年現在、動物愛護管理法第22条の4は、販売が困難になった犬猫についても、原則として終生飼養を確保するよう事業者に求めています。犬猫等健康安全計画や獣医師との連携も、動物の健康と安全を守るための重要な仕組みです。
一方、環境省の2024年度統計では、自治体による犬猫の殺処分数は6,830頭に減少しました。しかし、この数字はペットショップの売れ残り頭数を示すものではなく、行政による引取り・処分全体の状況を表しています。
本当に注目すべきなのは、売れ残った犬猫が何頭いるかだけではなく、その後の生活がどのように保障されているかです。
動物を迎える側にも、価格や見た目だけで選ばず、健康状態、性格、飼育履歴、必要な医療費を確認し、生涯にわたって世話をする責任があります。
ペットショップから迎える場合でも、保護団体から譲り受ける場合でも、犬猫にとって大切なのは安心して暮らせる家庭が見つかることです。
売れ残りという言葉だけで動物の価値を判断せず、一頭一頭の命と向き合うこと。それが、ペットショップの販売慣行をより良い方向へ変え、犬猫の終生飼養を実現するための第一歩になります。