ホーム 芸能ニュース・ゴシップ 【JAL516便が海保機を見つけられなかった理由】夜間の視認性と管制の課題

【JAL516便が海保機を見つけられなかった理由】夜間の視認性と管制の課題

神汰 春人 神汰 春人 • 更新: • 公開: • 読了約 12 分
目次

事故の原因を考えるうえで、もう一つ大きな疑問がある。

それは、着陸していたJAL516便の操縦士が、なぜ滑走路上の海保機を衝突前に発見できなかったのかという問題だ。

海保機の灯火と滑走路の照明

事故が発生したのは17時47分。羽田空港ではすでに日没後で、月も出ていなかった。

運輸安全委員会の第2回経過報告では、海保機の外部灯火が白色だったことや、滑走路上の中心線灯・接地帯灯も白色だったことを踏まえ、夜間の視認性について追加検証を行ったと説明されている。

2025年3月26日から27日にかけては、中部国際空港でJA722Aと同型のDHC-8-315型機を滑走路上に配置し、夜間の視認性を調べる実験が実施された。

加えて、海保機の外部灯火を赤色に変更した場合や、機体の配置を滑走路中心線からずらした場合についても検証している。

JAL機のHUD使用も調査対象

第2回経過報告では、JAL516便の操縦席にいた2人の運航乗務員が、いずれもHUD(ヘッドアップディスプレイ)を使用していたことも調査対象に追加された。

HUDは、飛行に必要な情報を操縦士の前方に表示する装置である。

この装置の使用が外部監視にどのような影響を与えたのか、また夜間に滑走路上の航空機をどの程度視認できたのかについて、運輸安全委員会はシミュレーター実験や実地検証を進めている。

ただし、HUDを使用していたこと自体が事故原因と確定したわけではない。

海保機側の誤進入、管制塔の監視、JAL機の視認性は、それぞれ独立した問題ではなく、互いに関連する安全上の課題として検証されている。

【2026年最新】羽田空港事故の調査状況と再発防止策はどうなった?

羽田空港事故海上保安庁

2026年11月時点

事故後、国土交通省は「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会」を設置し、航空機の滑走路誤進入を防ぐための対策を進めてきた。

2026年版の交通安全白書では、2025年12月22日時点の対策進捗が整理されている。主な取り組みは、管制交信の改善、警報システムの強化、RWSLの導入、管制官の増員と疲労管理などだ。

1.RWSL(滑走路状態表示灯)の導入

今回の事故を受けて特に注目されているのが、RWSL(Runway Status Lights)だ。

RWSLは、滑走路の使用状況に応じて自動的に警告灯を点灯させ、航空機や車両に危険を知らせるシステムである。

特徴は、航空管制官からの指示とは独立して機能することだ。

管制官が誤った指示を出した場合や、操縦士が指示を正しく理解できなかった場合でも、滑走路の使用状況に応じて注意を促す仕組みとなっている。

国土交通省は2024年9月、羽田空港C滑走路に接続する一部誘導路で工事を開始すると発表した。

ただし、2026年時点で羽田C滑走路の対象設備が全面供用されているわけではない。2026年版交通安全白書では、2027年度末から順次供用開始予定とされている。

つまり、RWSLは事故後の重要な対策だが、2026年11月時点では導入完了と扱うことはできない。

2.管制官向け警報システムの強化

事故当時の滑走路占有監視支援機能は、注意喚起を画面に表示する仕組みだった。

しかし、表示だけでは管制官が警報を見落とす可能性がある。

そこで、国土交通省は段階的な改修を進めた。

- 2024年10月31日:注意喚起表示に音声アラームを追加。
- 第2段階:危険が切迫した場合に警報表示と警報音を発する機能を追加。
- 2025年度中:空港ごとの調整を経て、第2段階の運用を開始する計画。

単に警報を増やすだけでなく、通常の注意喚起と緊急性の高い警報を区別することが狙いだ。

3.管制交信とパイロット訓練の見直し

事故では、管制官の指示に対して副操縦員が正しく復唱していたにもかかわらず、操縦室内の認識を一致させられなかった。

この問題を踏まえ、パイロット間の意思疎通を改善するCRM(Crew Resource Management)訓練の強化が進められた。

2025年6月6日に公布された改正航空法では、自家用操縦士を含む全てのパイロットに対して、CRMに関する初期・定期訓練が義務化され、同年12月1日に施行された。

また、管制官とパイロットの交信に関する研修や意見交換も実施されている。

2025年6月には「ATCコミュニケーションハンドブック」も改訂された。

離陸順位を示すNo.1やNo.2などの情報についても、誤解を招かないよう情報提供時の留意事項が周知されている。

4.航空管制官の増員と疲労管理

航空管制業務の安全性を高めるには、設備だけでなく人員体制の改善も欠かせない。

国土交通省が公表した対策の進捗は次のとおり。

- 2024年8月1日:羽田、成田、関西、福岡、那覇の5空港に監視体制強化のため14人を配置。
- 2024年12月1日:航空保安大学校の採用枠を28人から40人に拡大。
- 2025年度から:離着陸調整担当を新設し、2025・2026年度の定員として56人を設定。
- 2026年度中:業務の困難性や複雑性に応じて管制官の疲労を把握・管理する仕組みの運用開始を予定。

特に疲労管理は重要だ。

羽田空港のように離着陸機が多い空港では、管制官が複数の航空機の位置や動きを同時に把握しなければならない。

そのため、勤務時間だけでなく、担当業務の複雑さや負担も考慮した管理体制が求められている。

5.滑走路安全チームと空港車両の位置情報管理

2024年9月には、主要空港に滑走路安全チーム(RST)が設置された。

加えて、2025年12月1日には改正航空法施行規則に基づく制度的措置が施行され、主要空港におけるRSTの設置などが義務化された。

また、滑走路に進入する車両には位置情報などを送信する装置の搭載を義務付ける措置も進んでいる。

これは航空機だけでなく、滑走路に入る空港関係車両も含めて位置情報を把握し、衝突リスクを減らすための対策である。

こうした取り組みは、航空機と管制官だけでなく、空港全体を一つの安全管理システムとして捉える方向への転換を示している。

運輸安全委員会の最終報告書は公表されたのか

最終原因は未確定

2026年時点で重要なのが、運輸安全委員会による調査の進捗だ。

公表された経過報告は次の2つである。

公表日 報告書 主な内容
2024年12月25日 第1回経過報告 事故の詳細な経緯、管制交信、3つの主要な要因、今後の分析事項
2025年12月25日 第2回経過報告 機長の疲労、操縦室内の連携、管制監視、JAL機の視認性などの追加調査

第2回経過報告では、2025年に実施した検証実験や関係者への聞き取りなどがまとめられた。

特に、次の4つの分野が引き続き調査されている。

1. 海保機の機長の疲労や勤務管理、操縦室内の意思疎通。
2. 管制塔の滑走路監視体制と警報システムの運用。
3. JAL機からの海保機の視認性やHUDの影響。
4. 衝突後の火災、機内放送、非常脱出、消火救難活動。

2026年版の運輸安全委員会年報でも、本件は第2回経過報告を公表した調査案件として記録されている。また、2026年2月の航空事故調査進捗資料では、引き続き「調査中」とされていた。

したがって、2026年11月時点で確認できる公表資料からは、最終報告書による確定的な原因認定は確認できない。

第2回経過報告は、事故原因の最終結論ではなく、再発防止に向けた調査の途中経過なのである。

【プロの結論】再発防止策で本当に注目すべき3つのポイント

今回の事故から得られる教訓は、航空安全を一つの人間の判断だけに依存させてはならないということだ。

特に、次の3点が今後の評価基準になる。

- 人の確認: 管制指示の復唱だけでなく、操縦士同士が指示の意味を理解し、互いの認識を確認できるか。
- 設備の補完: RWSLや警報システムが、人間の見落としや誤認を補えるか。
- 組織の管理: 管制官やパイロットの疲労、担当業務の負担、監視体制を継続的に改善できるか。

RWSLの設置予定だけを見て安全対策が完了したと判断するのは早い。実際に設備が稼働しているか、警報が適切に認識されるか、訓練や人員配置が機能しているかまで確認する必要がある。

航空安全の評価は、対策の発表件数ではなく、現場で危険を発見し、衝突を防ぐ仕組みが実際に機能しているかで決まる。

【羽田空港事故と海上保安庁】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:羽田空港事故で海上保安庁機が衝突した原因は何ですか?

A1:海保機JA722Aが滑走路手前で待機する指示を受けていたにもかかわらず、滑走路に進入して停止したことが直接的な経緯です。管制塔が進入を認識できず、JAL516便も衝突直前まで機体を認識していませんでした。機長の認識や操縦室内の連携、管制監視などが引き続き調査されています。

Q2:海上保安庁機JA722Aの乗員は何人亡くなりましたか?

A2:6人の乗員のうち5人が亡くなりました。機長は重傷を負いました。一方、JAL516便の乗客367人と乗員12人は全員脱出しています。

Q3:羽田空港事故の再発防止策としてRWSLは導入されましたか?

A3:羽田空港C滑走路の一部誘導路では工事が始まっています。ただし、2026年時点では対象設備の供用開始前で、2027年度末から順次供用を開始する予定です。ほかにも管制警報の強化、CRM訓練の義務化、管制官の増員や疲労管理などが進められています。

2024年1月2日に発生した羽田空港航空機衝突事故は、能登半島地震の支援物資輸送に向かっていた海上保安庁機JA722Aと、日本航空JAL516便がC滑走路上で衝突した重大事故だった。

事故では海上保安庁の乗員5人が亡くなり、JAL516便の379人は全員脱出した。

事故の発生経緯については、海保機が滑走路進入許可を得たと認識して進入したこと、管制塔がその進入を把握していなかったこと、JAL機が海保機を衝突直前まで認識していなかったことが、第1回経過報告で示されている。

2026年11月現在、運輸安全委員会の最終的な原因究明は継続課題であり、第2回経過報告で示された疲労管理、管制監視、視認性などの追加分析が重要な焦点となっている。

再発防止策についても、RWSL、管制警報、CRM訓練、管制官の人員強化など、複数の取り組みが進んでいる。

羽田空港事故が残した最大の教訓は、人間の判断ミスを完全になくすことを前提とするのではなく、仮に誤認や見落としが起きても重大事故に至らない仕組みを構築することだ。

最終報告書で明らかになる事故原因と、2027年度以降に予定されるRWSLの供用開始を含めた安全対策の実効性が、今後も注目される。

同じカテゴリの記事

神汰 春人
デジタルマーケター 神汰 春人
プロフィールを見る →

俳優・アーティストの公式発表や所属事務所の一次情報を突き合わせて記事を整理。出典を明記し、数字と日付は必ず元資料で確認してから執筆する。

おすすめの関連記事